neon's note

Easy Essay

お暇な時にでも読んで頂きたい簡単な読み物です。

目次

2003年11月にキリンジの武道館ライブを見に東京に行ってまいりました。その時のレポートをまとめたものです。旅行記風に仕上げたのでキリンジのライブレポ以外の事も含まれています。

  1. 序章(11/19)
  2. 雨をみくびるな〜ニュータウン(11/20)
  3. 休日ダイヤ(11/21)
  4. グッデイ・グッバイ(11/23)
  5. 牡牛座ラプソディ(11/26)
  6. カメレオンガール(11/27)
  7. ハピネス(11/28)
  8. 風を撃て(11/30)
  9. 繁華街(12/14)
  10. エイリアンズ(01/14)
  11. まぶしがりや(01/23)
  12. ブルーゾンビ(01/27)
  13. 耳をうずめて(02/06)

序章

客電が落ち、それまで騒然としていた空気が一瞬にして止まると、瞬きもせぬ間に歓声が突風を作り出す。華やかで刺激的な光が会場に乱舞し、突風はさらに勢いを増す。

サポートメンバーに続いて、本日の主役、キリンジの登場。向かい風を浴びながら、ギターを掛け、スタンバイ完了。

♪〜♪〜♪〜♪

印象的なコーラスが鳴り響き、最大風速!その風を射抜くかのような『風を撃て』!

歓喜の時間が始まった!

雨をみくびるな〜ニュータウン

11月16日午前7時、新潟は荒れ模様。時折起こる稲光に驚きながら新潟駅へ向かう電車に乗り込む。車窓から外を覗く。街の灯が水に滲んでいく。夜中には止む?

いいや。新幹線が走り出し、幾つかの駅を過ぎ、国境の長いトンネルを抜ければ、そこは快晴の日曜日。なんだか新潟がこちらの為に悪天候を背負い込んでるような感覚。トンネルを挟んでまったく違う世界が拡がったのは今も昔も同じですね。

東京まではあっという間。キヨスクで競馬ブックを買い、車内で音楽を聴きながら予想をしているうちに巨大なビル郡に遭遇。新しい街、仰ぎ見るビル。地下鉄に乗り、まず最初の目的地である清澄白河駅へ。時間に余裕があったので近辺を散策することにする。"下町"を感じさせる街並みと商店街。そんなに多くない交通量。なんだか暖かな気持ちになる。いや、この日の暑させいなのかな。

しばらく歩いていると川を発見。羽を休めている鳥たち、犬の散歩をする地元の人、ホームレスと思われる中年、椅子に座ってひたすら水面を眺めている老人などがおり、そのアーティスティックな風景を共有できる喜びをひたすら味わう(後で調べたら「小名木川」という隅田川に流れる川だそうです)。

そこから少し歩いたところで公園を発見したのでそこで一休みすることにする。団地の片隅に位置する公園では親子がキャッチボールをしたり、チャンバラ合戦で汗を流す。待ち人が来るまでそこのベンチで星新一のショートショートを読む。新鮮な光景とポカポカ陽だまりの中での充実した読書。でも、親子からみたらショートショートにありがちな題材「謎の男」だったのでしょうね。

ちょうどキリのいいところまで読み終わったところで携帯に連絡が入る。本日いろいろと案内をしてくれるショウさんの登場。『ガウディ〜かたちの探求』展が催されている東京現代美術館へ出発。

休日ダイヤ

清澄白河駅から東京現代美術館までは約10分。無理矢理地元の商店街を通らせる矢印案内にしたがって歩を進める。途中に何軒か居酒屋を発見。夜になると商店街の人たちやサラリーマンで賑わうんだろうなぁ。そんな想像を膨らませると、もうよそ者じゃない感じ。そんな風に思ったりする。

東京現代美術館は地方人の自分にとっては圧巻の建物。昔遊園地で遊んだ"鏡の館"を彷彿とさせる入り口を抜けるとオブジェのようなベンチが並ぶガラス張りの通路。当たり前だけど光の入り方も考えられた設計なんだろうなぁ。きっとこういう建物やパーツの一つ一つにもガウディの息が通っているのだろうなと関心させられます。

ガウディ〜かたちの探求』展は少し前にNHKの特集を見てから東京に行くのなら是非見てみたいと思っていた展示会。19〜20世紀を代表する建築家アントニ・ガウディの生涯や建築分析を見ることができます。自分は建築に関してまったくの素人なのですが、ガウディの作り出した計算に計算を重ねた曲線美にはただただ納得させられるばかりでした。単純な図形の組み合わせによって成り立つ柱や、一本の柱を軸に多くの柱を組み合わせて作られた波打つ屋根などが模型やCGなどで丁寧に分かりやすく説明されていました。東京近郊にお住まいの方で建築に少しでも興味のある方は一見の価値有りです。

鑑賞後は近くのバーミヤンで昼食。競馬好きが集まれば何を話すかは必然。観戦に行ったという秋華賞の話などを聞くと、やはりあの歴史的瞬間に立ち会うことができなかった自分を悔やむばかり。でも、秋華賞を一緒に観戦したという友人のmisoくんからのお土産を頂き、満足満足。この場を借りてお礼を言わせていただきます。ありがとうmisoくん。

そんな話をしていると時間も当然過ぎるわけで、この後行く予定だった東京競馬場での競馬観戦をキャンセルすることに。再び清澄白河駅に戻り、地下鉄に乗って水道橋へ行くことになりました。

グッデイ・グッバイ

清澄白河駅からから神保町へ移動し、そこから水道橋方面に歩く。ショウさんに「キョロキョロしちゃだめよ」とたしなめられながらWINS後楽園を目指していると、結構な混雑に出くわす。「今回のエリザベス女王杯は人気あるんだなぁ。それともG1になると毎回こんな感じなのかなぁ。」なんて思いながら歩道橋を渡っていると、なにやらスーツ姿の偉そうな人が「立ち止まらないでください」と拡声器で呼びかけている。

実はこの日は高橋尚子選手が出場することでも注目を集めていた東京国際女子マラソンの日。今まさに渡らんとしている歩道橋の下を高橋尚子が猛スピードで走り抜けていく。そんな想像に掻き立てられる。選手とは対象にゆっくりと進み、歩道橋の中ほどに来たところで突然沿道の観客から歓声が起こる!

Qちゃんか?Qちゃんなのか?Qちゃん来るのか?Qちゃんかわいいのか?監督グラサンなのか?Qちゃんトップか?

おそらく下位の選手でした。先頭グループは走り去ったあとだった模様。確かに先頭グループだったらもっと混雑しているよね。それでも、なんだか得をした気分になって、懸命に走ってる選手に心の中で声援を送る。競馬でもそうですが、こういう場面ではみんな一つになれるのが嬉しい。まったく知らない人でも親近感が沸いてくる。混雑は好きではないがGood Day!でも、次があるのでGood-bye!今度は競馬の女王決定戦を見に行こうか。今年牝馬三冠を取った競馬のQちゃんも強いぞー。

牡牛座ラプソディ

WINS後楽園はもちろん初体験。ショウさんが「6階に行く」との事で、2階から6階まで直通のエスカレーターを昇っていく。長いエスカレーター。すれ違う人々のほとんどはエリザベス女王杯の馬券を買って帰る人かな。当てる自信がないのなら今のうちに降りた方が得策の高さ。

6階に到着し、オッズ表をプリントアウト。早速検討に入る。直前の予想は◎スティルインラブに○アドマイヤグルーヴ。馬複のオッズは……まぁ、こんなものかな。他の馬も強いけどこの2頭が抜けて強いはず。2番も1番もない。消しー。……でも、せっかく遠出してきたんだからちょっと遊んでみようと思い、この2頭をはずした3連複BOXを購入。当たったら今晩は美味い酒を飲もうか。隣のショウさんは迷った挙句好きな馬ヤマカツリリーの単勝を購入。なかなか一途な人。

ここで前出のmisoくんからアドマイヤグルーヴとスティルインラブの馬単を購入したいとのメールが入っていたので、いくら買うのかメールを送り返す。返ってきた答えは「1000円」。あまりにも普通の返答だったので、イタズラ大好きの自分とショウさんは「10000円買った。」とメールを送り返し、1000円購入。「俺、桁間違った?」と素なレスをくれるmisoくんのメールを二人で微笑みながら見て楽しむ。彼にばれたら………居直ればいい。

その後はメインまで時間があったので東京ドーム周辺で時間つぶし。新潟ではありえないほど競馬の本が揃っている本屋やジャイアンツグッズ満載のお店でおもしろ商品にツッコミを入れながら過ごす。時間はあっという間に過ぎてエリザベス女王杯の発走時間。

レースは先行するスマイルトゥモローがひっぱりハイペース。中段より後方でスティルインラブとアドマイヤグルーヴが待機する展開。直線に向くと後方に待機していた2頭が進出し、一騎打ちムード。アドマイヤグルーヴが頭一つ抜け出したものの、三冠牝馬のスティルインラブも内から差し返すデッドヒート!ゴールは目前!どっちだ!?わずかにアドマイヤ!母子3代G1制覇!!

1着アドマイヤグルーヴ、2着スティルインラブ!東京国際女子マラソンと一緒で、大本命が2着にやぶれた。そして、なんとmisoくんの予想が大的中!ん?……misoくんの予想が的中????

「やばい……。」つぶやいて目が点になる二人。そして間髪いれずに鳴り響く着信音……。

「あ、もしもし、miso?」「やぁったぁぁぁぁーーー!!」「的中おめでとう……。」「興奮したわーーー!」「悲しいお知らせが……」「10万やー10万ーーー、燃えたーーー!」「あのー……悲しいお知らせがあるんですが……」「……なに?」

「……実は1万買ったの、あれ嘘で、1000円しか買ってない……。」

「……マジで!?」

あぁ、大マジさ……。

カメレオンガール

「冗談だってわかってるって(笑)」

そんな明るい声に救われた。どうやら釣られていたのは自分たちだったらしい。しかも、当たったお金は取りにいけないから二人で何か美味しいものでも食べてくれとのこと。実に太っ腹で友達思いの男です。いや、漢です。

misoくんの言葉に甘えて早速換金に向かうものの、WINS内はまだまだ混雑。本命決着だけあって空きそうにないので換金は後回しにしてどこかくつろげる所に移動することにする。なーに、ここは東京。いたるところにWINSがあるし、いつだって換金できるんだ。

ショウさんに連れられて行ったのはサンマルクカフェ。ここでアイスゆずちゃとアイスラテを注文し、近くの店で買ったカメとカメレオンのフィギュアを組み立てながらしばし歓談。あの光景、周りから浮いてなかっただろうか?ちょっと浮いていた気がする。苦戦しながらも真剣に組み立て、カフェテラスに立派なオブジェが2つ並ぶ。

キリンジライブの時間が迫ってくる。期待と不安が交錯する。どんなライブになるんだろう?あの歌を歌ってくれるだろうか?お客さん、入ってるのだろうか?アリーナに空席があったらどうしよう……。せっかくの武道館なのに盛り上がらなかったら嫌だなぁ。お兄ちゃん、ちゃんと歌えるだろうか?有名人も来るって言ってたな。ユーミンと椎名林檎は『キリンジからの6通の手紙』で観戦に来るっていってたな。一流ミュージシャンを呼ぶキリンジってすごいなぁ。

ラテを口にする。秋の日はつるべ落とし。ストローごしに映る街が微睡(まどろ)んでいく。それとは逆に、興奮し、冴えわたる感覚。遠足の前日はなかなか寝付けない。刻一刻と迫る開場時間。そろそろ店を出て武道館へ向かおうか。ごちそうさま。

再度地下鉄に乗り、おなじみの九段下で下車。混雑が予想される為、今のうちに帰りの切符を購入。出口へ向かう階段を上がる。

地上に出るとそこはキリンジファンがたくさん!いやぁ、嬉しいよ。こんなにも彼らの曲を聴きに来た人がいるなんて。安堵の表情を見せる自分に「わが子を見守る両親みたい」と言うショウさん。年上の彼らなのに、その音楽は最高なのに、なぜかこの数ヶ月不安で仕方なかった。友人に「キリンジのライブに行く」と言えば「相撲取りなら知ってるんだけどなぁ」と返されることもしばしば。興味を持った友人にCDを貸せば「いいねー!」というのに、名前すら知らない人もいた。だから彼らの音楽を聴きに来た人がこんなにいることがすごく嬉しかった。さぁ、会場へ。

坂道を上りながら爆風スランプの曲をなぞる。ダフ屋の脇をすり抜け、門をくぐる。そして姿を現す日本武道館。見上げれば、そこには大きな大きな玉ねぎが……。

すでに暗くてよく見えなかった。

ハピネス

武道館キリンジ2003日本武道館の入り口には大きく「キリンジ TOUR 2003」の文字。多くの人が携帯を片手に写真を撮る。3年半前に買った自分の携帯「J-DN02」。CNETの評価では散々な結果となっている骨董品にはカメラなんて代物はついてるわけないので、すかさずショウさんに頼む。それにしてもこの看板、なかなか堂々としているじゃないですか。改めてここでキリンジがライブをやるのだということを実感する。係員にチケット渡し、カメラチェックを受けて入場。

中に入って座席を探す。一階席の南スタンド。思っていたよりも狭い館内。少し遠いがステージ全体が見渡せる好ポジション。ほうほう、セットはあんな感じなのか。ん??なんだあれは!!??

ステージの両脇に一際目立つ彫像が2体。色は銀色で大きさはおおよそ2.5m。あれはまさか堀込兄弟!?遠くて顔が確認できない。

そこで、話し合った末、3000円のところを2000円で売っていた双眼鏡を購入。misoくんからの餞別を利用させていただく。人の金だと2000円はすごく安い買い物ね。

双眼鏡を覗き込む。ステージの照明が落ちているので確信はもてないが、おそらく堀込兄弟の彫像と判明。もしかしてここから兄弟がでてくるのか?エガちゃんみたいな演出なのか?そんなことさらっとクールにやりそうなのが怖い。

ステージは神殿か祭壇のような造りで、両脇に兄弟像とタツノオトシゴ像。なかなか意味不明なセット。楽器はグランドピアノにキーボード、ドラム、パーカッションらしきものが見える。あとはギターやベースのアンプ類。あと少しでここでスペシャリストたちの競演が見られるんだなぁ。

徐々に客席が埋まっていく。ショウさんとキリンジのことや、ライブで演奏される曲の予想などを話す。開演時間に比例して周りもどんどん覆いつくされていく。男女比は7:3で女性の方が多め。友達同士で来ているであろう女性もいれば、あきらかに親子であろう二人組みなど多種多様。2階席は見ることができなかったが、パっと見てアリーナと一階席はほぼ満席。沢山入っていて感慨一入。

そして午後6時10分過ぎ。日本武道館が動き出す!

客電が落ち、それまで騒然としていた空気が一瞬にして止まると、瞬きもせぬ間に歓声が突風を作り出す。華やかで刺激的な光が会場に乱舞し、突風はさらに勢いを増す。

サポートメンバーに続いて、本日の主役、キリンジの登場。向かい風を浴びながら、ギターを掛け、スタンバイ完了。

♪〜♪〜♪〜♪

印象的なコーラスが鳴り響き、最大風速!その風を射抜くかのような『風を撃て』!

歓喜の時間が始まった!

風を撃て

ペーパー・ドライヴァーズ・ミュージック『風を撃て』は1stアルバム『ペーパー・ドライバーズ・ミュージック(P.D.M)』に収録されているインディーズ時代からの作品。武道館に集まった観客を一気にヒートアップさせるにはもってこいの曲。アリーナは総立ち。黒い髪が乱れる、暴れるシャツ。メロが移行するたびにスピード感が増していく。後ろの人が気になって立てないが、自然と動く体。刻むリズム。もうメロメロ。

続いてはおなじみのピアノイントロ、なんともご機嫌な曲、『グッデイ・グッバイ』。こんな流れかキリンジ。興奮してキリンジ初心者のショウさんに「グッデイ・グッバイだよ」と教えるが、わかっていた模様。言い訳……ねぇ、お喋りを、いいだろう?

グッデイ・グッバイこの曲はサビで「誰でもいいのさ」というとこでなんともグっとくる。音が捻じ曲がるような、切ないような、それでいて力強いメロディ。

そしていよいよやってきました大サビ兄貴パート!以前から「兄貴の歌はヒヤヒヤする」という声を聞いていたので、自分も緊張しながら、すこしはにかみながら応援する。そして歌い終わると歓声!隣の女の子グループは兄貴ファンだったらしく、キャッキャとはしゃいでいた。

2曲を終えた後でMC。「キリンジですー」「いっぱい入りましたねー」「……ということで、僕たちの一番新しい曲をやります」といった感じの簡潔なトーク。笑いが起こる。苦手なトークを早く終わらせたい感じで次の曲へ。

繁華街

カメレオンガール"一番新しい曲"というのは8月に発売された『カメレオンガール』のこと。変幻自在の彼女に振り回される報われぬ男のラブソング。サビではメロディーラインがどんどん上昇し、肝心の「カメレオンガール」というところでなんとも言えない浮遊感。よく表現されている。

淡々と演奏する高樹氏。泰行氏は高音がつらそうなのが気になる。やっぱりまだ緊張しているのかな。本番前に体調を崩したって聞いていたし、もしかしたら本調子じゃないのかも。

と、そんな事を思ったことにしようかと思う。たしかそんな事を思ったはず。実は思っていなかったのかもしれない。でも、思ったことにしたほうが次に繋げやすいので思ったということにする。

イントロが流れてすぐにわかった。大好きな曲『雨を見くびるな』。ボディーブローが鳩尾を蝕む。声の調子が悪いとか思ってしまってごめんなさい。

続く『愛のCoda』では演奏中に突然巨大なミラーボールが上空に踊る演出。会場に驚きのため息が漏れる。高樹氏の洗練された歌詞とメロディーに泰行氏の甘いヴォーカルが乗る。彼らの楽曲の中でも最高のフレーズのひとつと思ってる「赤に浸す、青が散る、夜に沈む、星がこぼれた」という所で一気に視界が広がる。これほどはっきりとした情景を映し出すことが出来るのはやっぱり才能だ。

曲が終わると泰行氏がアコースティックギターにチェンジ。ステージの照明が落ちる。いったい何が始まるんだ?

演奏が始まる。泰行氏のギターがイントロを奏でる。初期からのファンにはお馴染みの曲、『繁華街』。

この曲は1stアルバム『ペーパー・ドライヴァーズ・ミュージック』に収録される予定だったが、レコーディングなどで満足がいかなかったらしく、ずっとライブのみで演奏され続けてきた曲。9月に発売された『For Beautiful Human Life』で4年越しの収録となった。

華やかな繁華街の裏で渦巻く人間模様、泥臭さ。街の闇を見事に表現する。なんといっても泰行氏の生ヴォーカルがかっこいい。慣れ親しんだマスタードに不意を突かれる感覚。むせ返しますよ、そりゃ。幅が広いなぁ。

演奏が終わったところでメンバー紹介。今回のツアーメンバーはピアノに大山泰輝、コーラスに真城めぐみ(HICKSVILLE)、パーカッションに浜崎大地、ベースに立川智也、ドラムに鈴木達也、キーボードに中山努、ペダルスチールに田村玄一(敬称略)の7人。加えて前出の"堀込兄弟像"を「守り神」と紹介し、「合計"9"名のサポートメンバーとキリンジでお届けします。」とコメント。なかなかベタなMCで次の曲へ。

エイリアンズ

続いては最新アルバム『For Beautiful Human Life』からの新曲『嫉妬』と、『Fine』から『地を這う者に翼はいらぬ』を演奏。前者はかなり好きな曲で、ライブでどんな演奏になるのか楽しみにしていたのですが、アルバムをきっちりと再現する内容。パーカッションの動きがすごかった。後者はライブ栄えする曲。きっちりと決めてライブの前半を締めくくる。

次の曲は緊張の兄貴曲『ハピネス』。最初から最後まで高樹氏がヴォーカルをつとめる。兄貴曲は本当にドキドキする。しかし、期待とは裏腹に何の問題もなく歌い上げる兄貴。兄貴ぃ、素敵だ。ただ、このちょっとがっかりした気持ちは何なんだろう?

エイリアンズ曲が終わり、照明が落ちる。青い光がステージを包む。そして奏でられるお馴染みのイントロ。

あぁ、この曲をやってくれるのですか……。キリンジの曲の中で一番好きな曲を一つ挙げるとすればやっぱりこの曲を選ぶのかな……『エイリアンズ』。

初めてのキリンジライブで生エイリアンズを聴けるなんてほんと幸せ者です。禁断の果実を生でほうばる瞬間。なんとも言えない切ない浮遊感、孤独感。

笑っておくれダーリン ほら素晴らしい夜に

僕の短所を ジョークにしても眉をひそめないで。

キリンジ『エイリアンズ』

このフレーズ、心が痺れるんです。これって男の台詞ですよね。下らない事を言ってしまった自分が情けなくなってくる。

演奏後はMC。正直もうあまり覚えていません。あまりにも時間が経ちすぎました。やっぱりライブレポというのはスパっと書き上げないとダメなものですね。ちょっとだけ覚えてることを最後に書きます。

「次は兄の曲をやりましょうか」……。

まぶしがりや

ここからはちょっとした見所、聴き所。キリンジテイストに溢れた楽曲が続く。アルバム『OMNIBUS』から『まぶしがりや』と『来たるべき旅立ちを前に』。

OMNIBUS『まぶしがりや』は兄貴ソング。きれいなアルペジオとムーディなメロディ。平日の夕暮れにFMをつけた時にこんな曲が流れてきたら、何もしなくてもそれは有意義な時間になる。それを生で聴かせてもらえる今は、それ以上に有意義な時間。だから……兄貴が歌詞の順番を間違えたなんてこと……言えない……言えない。

『来たるべき旅立ちを前に』は"冷めたピザ"という言葉が印象的な曲。CDではあまり好んで聴かない方だったが、ライブではなかなか盛り上がる。もしキリンジがもっとロックロックこんにちはだったら、"冷めたピザを頬張れ!!"の所はお客さんに歌わせるかもしれませんね。

そして続いては初期の代表曲『ニュータウン』。待ってました!大好きな曲!メロディーも爽やかで気持ちいいし、歌詞も響きが素晴らしく、何度聴いても飽きない。ある意味この曲が一番キリンジっぽい曲なのかもしれない。ライブで聴くことができて幸せ。

続いて演奏された『僕の心のありったけ』は最新アルバムからのチョイス。爽やかなのに一度歌詞の意味を深読みしすぎるともうエロエロソングにしか聞こえなくなってくる曲。男性の方、告白するときにこの歌を贈ってみてください。レポお待ちしております。

スウィートソウルep次は『スウィートソウル』。アルバムに入ることでその良さを再認識させられた曲。甘く、ゆったり流れる時間にちょっとお疲れ気味のショウさんはこの時だけ少しウツラウツラ。

ここでMC。各会場でも結構しゃべっているのに「MCが少ないね。」といわれる事に首をひねる泰行氏。「"トーク&ライブ"みたいになっても……」と笑う高樹氏に泰行氏が「"トーク&ライブ&握手会……&BBQ"みたいになったりしてねぇ」と返し、会場に笑い。また、特に話題がないのに「どうですか。」と振る泰行氏に高樹氏が「よく言うけど、その"どうですか"というのはどういうことなの?」と聞き返す場面も。またまた会場に笑い。

いいなぁこの空気。何でも面白くなってしまう。大爆笑というわけではないけど、みんな笑ってる雰囲気。きっと音楽は凄いのに少し口下手でシャイな彼らが好きなんだよね。二人はきっと"まぶしがりや"だ。

最後に「ここまではしっとりした曲が続いてたので、ここからはちょっと熱い感じでいきましょうか」と締めて、次の曲へ。

ブルーゾンビ

アルカディア「熱い感じ」と言って入った曲は『アルカディア』、自分にとっては思い出深い曲。この曲が発売されたのは4年前の事で、キリンジを好きになって初めて聴いた"新曲"だった。深夜の音楽番組で25位くらいにランクインしてて、「売れてないなぁ」としみじみしてたのを思い出す。哀愁漂うメロディー、抜群の歌詞センス。ライブで聴くアルカディアはそこに確かに"熱さ"が入り混じり、圧倒されっぱなし。ソロを弾く兄貴かっこいい。

次の『ブルーゾンビ』はライブで毎回やって欲しい曲。毎回やってください。アルバムではどちらかというと地味な存在だが、ライブだと間違いなくカッコイイ。リズム隊の組み立て、堀込兄弟のギターソロ、ツアーを重ねてぴったりあった息が抜群のグルーヴを作り出す。最後は泰行氏のピースサイン。心はもうふらりふーらふーらー。

そして『奴のシャツ』。最新アルバムの口火を切るこの曲もライブでは別曲。目まぐるしくたかれるフラッシュライトをバックにスピード感のある演奏。その辺にうようよいる自称ロックバンドよりもよっぽどロックしてます。

演奏が終わると、パーカッションの演奏が始まる。お?なんだかラテンな雰囲気だぞ。いい感じ。なんだろう??

ムラサキ☆サンセットムラサキ☆サンセット』だった。突然始まる堀込兄弟と真城氏の合唱。伴奏はパーカッションだけだったのですが、これが実に軽快で楽しい、美しい。慣れたハーモニー。これまで沢山の演奏を聴いてきたが、アレンジだけで言ったらこれが一番意表を突いてて良かった。1番を歌い上げたところで演奏が入り、会場も最高潮。ガラスの玉は粉々に砕け散った。

その流れで『the echo』へ。これも最新アルバムからのチョイス。変拍子のクールな曲で、慣れてないとリズムに乗るのが難しい。右前のお客さんはなかなかリズムとれなくて苦戦している様子。そんな光景もほんのちょっと楽しみながら楽曲を堪能。

演奏が終わると泰行氏が「ありがとうー」と言ってメンバーが全員退場。時計を見るともう2時間も経っている。あれれ、もうこんな時間かー。あとはアンコールを残すのみですか。本当にあっという間。

しばらくしてメンバーが再登場。ここで少しMC。ツアーグッズの紹介。今回の目玉はなんといってもキリンジトランプ。クイーンやキングの顔がツアーメンバーになっているという。「正月に親戚で集まった時にとかトランプやってね、"俺このメガネ(高樹氏)いらねーー"とか言って捨てられるんですよきっと。」と高樹氏。

そしてキリンジ武道館ライブ最終楽章、アンコールに突入!「もう少しだけお付き合いくださいー」。泰行氏の言葉をきっかけに流れ出すイントロ。そしていっせいに点灯される客電。

耳をうずめて〜終章

47''45'照明が武道館を照らし出す。突然現れた沢山の人々にちょっと泣きそうになった。演奏曲は『銀砂子のピンボール』。アリーナは総立ち。

続いては『あの世で罰を受けるほど』。まったくもってここしかない所に持ってくる。音楽に包まれていることが幸せ。

そんな心境を映し出すかのように『耳をうずめて』が始まる。もう無理ですよ。腹上死しちゃいますよ先生。僕ら音楽に愛されてる。たとえそれが揶揄だったとしても、美しい嘘だったとしても満足なのです。

演奏が終わる。サポートメンバーが退場する。これで終わりか。あっという間の出来事。こりゃちょっと自慢できるライブになったかも。。

ところがなぜかキリンジの二人はステージに残っている。そしてアコギのセッティングを始める。

始まった曲は『カウガール』。キリンジ二人による弾き語り。素晴らしい演奏と歌でした。観客に手を振りながら袖にはける二人。高樹氏は最後の最後まで手を振ってくれました。ありがとうキリンジ。

キリンジ武道館ライブはこれで終了。グッズ売り場に行ってトランプを買おうとするが、行列が出来ていたので諦める。その後は中野に行って食事。ショウさんとライブの話などで盛り上がる。初めてのライブだったが最高だったとのこと。

miso君からいただいた餞別(当たり馬券)があるから安心して飲み食いできる。今夜はとびっきり最高の夜だ。会計を済ませて外に出る。ショウさんからmisoくんの当たり馬券をもらうことにする。明日換金に行ってこよう。

ショウ:「ないよ」

ん?ないことないでしょ。ご冗談を……あれ??渡さなかった??ん??

慌ててカバンの中を確かめる。出てきたのはマークシート。……買ったつもりでいたようだ……。撃沈。

負け犬は路地で嘔吐。脊髄かけていく悲しみ。実のない花、花のない実。不二子もハニーも真っ青な展開。

問題ない。ちょっと残念だけど問題ない。カラオケに行ってキリンジを歌う。音楽がすべて。そして煌びやかな一日は終わっていった。

グッデイ、グッバイ。

(終)

宣伝

武道館公演を収録したキリンジ初のライブDVD。ライブレポと併せて見ていただけたら…ほんの少しは楽しめる……かどうか。

上記のDVDとこのライブCDで「KIRINJI TOUR 2003 LIVE at BUDOKAN」の音源をコンプリートできます。高樹氏の歌う『まぶしがりや』やアンコールの『あの世で罰を受けるほど』は必聴。

これを見れば(聴けば)キリンジのライブがどんな感じなのかもわかるかと思います。